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 五章:街を歩けば……2

ひさしぶりに地上に降り立つと、それだけでも十分に感覚が違うものである。空の上は、とりあえず船の上は、毎度機械の音が足元で響くのだ。ジャッシュのように慣れると、時々、その機械の音もいとおしくなるものだが、それでも、安定した地面の上の安定感の心地よさのもたらす安堵感とは全く違う。
 浮遊大陸の上もしっかりしているのだが、地上で生まれた人間にとっては、空の上というのは、何となくふわふわした印象がどうしても拭えないものである。感覚的なものだが、やはりこちらの方が落ち着くのだった。
「わあっ、色んな服がありますね! こんな大きな町初めてです!」
「おお、すげえ! 本当に色々ある!」
 早速騒ぎ出した連中に、早速ジャッシュは頭を痛くしていた。
 浮遊大陸の、しかも、比較的田舎から出てきた二人は、こういう街は確かに初めてかもしれない。そして、よくも悪くも素直な彼らは、素直に口にだしてわいわい騒ぐのだから、正直手に負えない。
(いかん! 目立っちゃいけないのに、これじゃおのぼりさんの軍団だ……)
 今はお尋ね者だということを、忘れないで欲しい。そうっと注意しようと思ったジョシュアの前に、さらに頭の痛い男が陽気に声をかけた。
「そうだろー! ここは、俺の友達がいるんだぞ。ものすごーく部下がいっぱいいる奴なんだ。街案内に呼び出してやろうかなあ」
 そんなことを無邪気にいう大男に、ジャッシュは内心声をあげた。
(ぎゃーっ! 親分のこと忘れてた!!)
 そうなんですかー。そうなんだよなー。とのんきに言い合っている連中を無視して、ジャッシュは腕を組んだ。
(こっ、このでかい鎧男どうする? 目立つどころじゃなかった!)
 実際、ヴァルロスが目の前に立ったとたん、周りの通りすがりの人々が、不穏そうにこちらをみて去っていく。ギャラリーができないのは、見るからに怪しげな一団なので、かかわりたくないだけに違いない。
(そ、そんな目を向けられていくと、なんだかダメージが……)
 そのかかわりたくない一味に自分が入っているのだろうと思うと、ジャッシュはなんだか悲しくなった。
(消えといてもらえないかなあ。召喚がどうとかっていってたし、消えられるはずだと思うんだけど)
 ジャッシュが、そうぼそりと思った時、ふと横に影が立った。
「理論的には消えられるはずだが」
 横にたたずんでいるビシュタルトから、ざっと離れてジャッシュは慌てていった。
「じ、じじい。だから、急に出てくるなと」
 ジャッシュはそういって文句を連ねるが、ビシュタルトはまるっきり無視をして、ふむ、と首をかしげた。
「しかし、あの娘の様子だと、呼び出す時に失敗すると、必要な時にでてこなくなるので、出しっぱなしのがよいのではないか?」
「無責任なこというなよ。爺さん。あの目立ち方はまずいだろ」
「は・か・せ」
 ビシュタルトは、静かな割りに妙に迫力のある雰囲気でそう言って続けた。
「しかし、いきなり敵が出て奴がいないと困ると思うのだがな。私は自分の安全は確保するが、とりあえずそれ以上戦う気はないし」
「戦えよ! た、確かに、ケモノとオレとティアラとサンは、戦う時にはあんまり役にたちそうにないけど。ほら、ネエさんとか戦ってくれるかどうかわからんけど、もふもふがいるだろ」
「しかし、確実に死人が出るぞ。さらに罪状が重なるだけだったりして……、な」
 ぼそりと言ってにやりとビシュタルトは笑った。
「不吉なことを言うなよ!」
 そういわれて、ふと、ジャッシュはあたりを見回した。前では、街にはしゃいでいるケモノと少女と人外。ジャッシュはさっと青ざめた。
「はっ! ネエさんがいない!」
「ああ、それなら武器商人の集まる場所に直進していくのをみたような……」
「爺、見たなら止めろよ!」
 そりゃあの姉さんなら、武器でも見に行くだろうが、いきなりやられると困る。追われている自覚があるのだろうか。
(いや、あるからかえってやってるのかも)
 戦うのが好きな人だし。ジャッシュは、首を振って、あまりその辺を考えないことにした。健康に悪いだけである。
「ネエさんは、とりあえず回収するとして、あれ、もう一人いないような……」
 目の前をちょろちょろしている小さめの二人とでかい男二人を数えたて、そして、ランスロット=シャルナークをひとつ指折りしたところで、ジャッシュは、さっと青くなった。
「サンがいねえ!」
 ランスロットがいなくなるより、本当はそっちのほうが大問題なのだった。
 なにせ、あれとあのなぞの生き物は何をしでかすかわからないからだ。





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背景:空色地図 -sorairo no chizu-



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